みなさまへ大切なご案内
2025年8月20日10時00分から8月22日18時20分まで、日本橋三越本館4階呉服売り場において、SOSAKUBAGの模倣品が販売されるという事態が発生いたしました。
また同時期に大丸札幌店でも同様の事案が発生いたしました。
当該時期に販売されていた商品はSOSAKUBAGではありません。
一ヶ月前にPOPUPを行ったばかりの売り場で、そのようなことが発生してしまったことは非常に残念に思います。
同時に、この件につきまして私にご連絡いただいた方、尽力いただいた方々に深く感謝申し上げます。
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この件が発覚してから数日間の間、長く考える時間がありました。
長文になりますが、普段心を寄せてくださっている方々と、同じものづくりを生業とする方々に気持ちが届けばいいなと思い、文章を書きます。
小説家、映画監督、プランナー、花火師、ライターなど、学生時代から会社員だった10年余りの間、これまで色々な表現に挑んできました。
しかし、どの発信にもなにかが足りない。
そんな思いを抱きながら生活する中で、初めて僕がSOSAKUBAGの原型に手をつけたのは、2020年の年初のことでした。
当時の僕は「家族」というくくりの中で仕事を見出すことに生きがいを感じ、与えられた環境の中にあるオリジナルを見出し、磨き上げることで人生を回していきたい。そんな理想を掲げたばかりの時期でした。
理想だけが高く、日々生活するのもやっとの時期で、とにかく家にあるもので時間を潰そうとしていた自分が目をつけたのは、妻が幼少期に集めたアケビや藤のツルでした。
試しにで編み始めてみると、夢中で手を動かし、時間が溶けるように過ぎていき、かごがいくつも出来上がっていました。
あっという間に家にあったツルを編み終えて、手持ち無沙汰になり家の中をウロウロしているときに、縁側で和紙作家の妻が使う楮の束に光があたっているのが見えました。
ひょっとしたら楮でも編めるのかもしれないなあと思いながら、その数日後、近所のスーパー近くで信号待ちをしているときに、いきなりカラフルに染められた楮のバッグが頭に浮かんだのです。
和紙作家の妻が使う楮を素材にバッグを編む、そして、着物の染色をしていた母から染めを教わる。
頭に浮かんだそのバッグは、自分の目指す家族というくくりの仕事になりうるのではないかと思いました。
染めるという作業も、編み込むという作業も、僕の中に答えが見えているように進みました。
編み上がったバッグを眺めていると、ポルトガルで歩いた銀杏並木が見えたり、祖母のラズベリー畑の光景が重なるようになり、無意識のうちに自分が情景を編んでいることに気が付きました。
大きなモザイク柄に見えるその光景は、目の悪かった僕が幼少期に見ていた景色そっくりで、色使いは小学生のころに美術の授業で作ったセミの版画にそっくりでした。
情景たちにはもれなくことばがついていて、数行のことばがバッグとともにあふれるようになりました。
それは僕が長く人に伝えたいと思いながらも、映像や言葉だけでは表しきることのできなかったことがそのものが、素直に表現されていました。
そうして出来上がったバッグに、最後に真鍮製のプレートをつけることにしました。シリアルナンバーは金工作家の父にならって、刻印を手打ちすることにしました。
和紙作家の妻が使う楮を素材に、着物の染色をしていた母と、金属工芸作家の父の技、僕の人生の全てを詰め込んだバッグ。
その形ができあがるまでには、最初に楮の束を眺めてから3年ほどの月日がかかりました。
軽くて柔らかく使いやすいから、楮という素材を使ったバッグが生まれたのではありません。
家族の技と自分のすべてを独学で磨き上げたものが、SOSAKUBAGなのです。
そして、人生の情景を詰め込んだ、みんなのお出かけをゆかいにしてくれる、そんな想いを持ち歩く入れ物です。
日頃の僕の投稿では、そのことを強く発信してはきませんでした。
バッグを持ってくださる方にとってわかりやすく、伝わりやすいと思うことを優先して伝え、その思いはいつか誰かが汲み取ってくれればいいのかなと思っていました。
ただバッグそのものを表面的に似せることはできても、僕がSOSAKUBAGに詰めた人生の重みは模倣できるものではないと信じているからこそ、もっとその想いを伝えていくべきなのだと強く感じました。
私がSOSAKUBAGを作る中で最も大切にしたいのは形にはならない想いであり、誇りです。
そしてそれは、素材として、見た目としての価値だけでない、草作という一人の作家が生み出すバッグにしかない価値が必要なのだと自信を持って発信していけるようになりたいと思います。
普段使ってくださっているみなさまに、そしてこれからSOSAKUBAGを手に取ってくださる方に。
絶対に模倣できない、最高のバッグを作り続けていきます。
これからもSOSAKUBAGをよろしくお願いいたします。
草作
写真は2020年1月19日。
試行錯誤を続けていた頃の僕です。